ここまで陰陽論と人体の構図について説明してきました。なのでここではその両方を重ね合わせた『人体の陰陽』について説明していきます。
陰と陽の振り分け
前Lessonで用いられた天と地のエネルギーですが、それらは各々で陽と陰の力を持っています。そしてこれが人体の『気』として扱われている以上、人体にも陽性と陰性が生まれて来ます。
天に近い上半身に位置する『心臓、肺、腎臓、膵臓、脾臓、肝臓』は陽性の力が強く、地面に近い下半身の『小腸、大腸、膀胱、胃、胆のう』は陰性の力が強い臓器となっています。
さらに上下だけでなく、人体の右側は天から、左側は地面からのエネルギーに影響し易い造りになっています。なので乳房や肺、卵巣、睾丸、腎臓など左右一対になっている臓器や部位は左側が比較的小さくなり、右側が多少大きくなる傾向があります。
他にも天は脊髄などの後ろ側、脳や心臓などの中枢機能に影響を与え、地は前へと膨張しやすい呼吸器系や消化器系、皮膚や手足などの外的構造にも影響を与えます。
左右上下でそれぞれの特性が見られると言っても、どちらかに比重が傾いているだけでどの部位も両方の性質を持っています。そのバランスを保つために、両方の性質を均等的に保持している循環器系が体中を巡ってエネルギーの運搬を行っています。
このように私達の体は天と地からのエネルギーに多大な影響を受け、それを体内で調和することで生命を維持できるのです。
食べ物の振り分け
陰陽論で全ての事象は陰と陽に分けられると説明したように、それは生物だけでなく食べ物にもあてはまります。そしてこの性質は人体にも大きな影響を与えるのです。
もし自身の持っている陰性と陽性の『気』だけで体の異常に対応できなくなった場合、病気や肌荒れなどの目に見える形として私達を襲ってきます。
このような時に薬を用いて体内の気を刺激し、体の調子を整えるのが医療としてよく見られる行為です。しかしそれよりも簡単で体に大きな負担を与えない行為こそ、食事なのです。
食事はただ空腹を満たす為だけの行為ではなく、食べ物を消化してその栄養を得る行為なのだと皆さまも承知のはずです。ですがここで吸収するのは栄養だけでなく、食べ物が持つ陰や陽の性質も吸収するのです。
たとえばお腹を冷やして悪化した場合、陰陽論の視点から見ると陰の性質を持った『冷え』と『胃腸』が互いの性質を合わせて強力になり、バランスを崩したと考えられます。その対処法として陽の性質を持った温かい食べ物が扱われます。
このように、食事を用いて治療や予防を行う事は東洋医学において重要な考えになっております。
ここで1つの疑問が生まれます。人間が陰と陽のエネルギーを両方用いてバランスを保とうとしているのに対し、なぜ食べ物の方は陰性や陽性に偏ってしまうのでしょうか?
その答えは人間が環境との「調和」を求めているのに対し、食べ物は環境への「適応」が行われたからです。
その証拠に、陰性と陽性のエネルギーを持つ食べ物が盛んに育まれる環境は次のように振り分けられます。
このような環境で育ち、それぞれ性質を持った食べ物は私達の食生活に大きな影響を与えています。暑い季節になれば涼しい陰性の性質を持った食材を、寒い季節になれば体を温めてくれる陽性の食材を用いて料理するのは古くから用いられてきた至極当たり前の行為でしょう。
それこそ自然な食事であり、マクロビオティックが求める形なのです。
Lesson4確認問題
Lesson4の練習問題に取り組んでみましょう!
知識を確認することで、より定着度が高まります。